抗酸化作用とは?体の「サビつき」を防ぐしくみをわかりやすく解説

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投稿日:2026.09.18  |  更新日:2026.09.18  |  約14分で読めます

抗酸化作用とは、体内で発生する活性酸素のはたらきを抑え、細胞が酸化(サビつき)することを防ぐはたらきのことです。体には自前の抗酸化酵素が備わっており、食事から摂る成分がそれを補うと考えられています。加齢とともに変化することも報告されています。

「抗酸化作用」という言葉は、緑茶やトマトのパッケージ、サプリメントの広告など、日常のあちこちで目にします。一方で、「何がどう働くことを抗酸化作用と呼ぶのか」を説明しようとすると、意外と言葉に詰まる方が多いのではないでしょうか。

本記事では、抗酸化作用の定義から、体に備わっている自前の抗酸化システムとそれを束ねるNrf2のしくみ、食事から摂る成分の位置づけ、そして「抗酸化物質は多く摂るほど良いのか」という疑問まで、研究報告をもとに順を追って整理します。

この記事でわかること

  • 抗酸化作用の定義と、「体がサビる」という比喩が指している現象
  • 体に備わる自前の抗酸化システム(SOD・カタラーゼ・グルタチオン)とNrf2のしくみ
  • 食事から摂る抗酸化成分の種類と、自前システムとの関係
  • 「抗酸化物質は多く摂るほど良い」とは言えない理由(大規模試験の結果)
  • 活性酸素を増やしすぎないために日常で意識できること

抗酸化作用とは ― 酸化を抑えるはたらき

抗酸化作用とは、その名のとおり「酸化に抗(あらが)うはたらき」、つまり活性酸素などが引き起こす「酸化」という反応を抑えるはたらきの総称です1

老化さん用語解説
活性酸素
呼吸で取り込んだ酸素の一部が、体内で反応性の高い状態に変化したものの総称。スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルなどが含まれる。

「酸化」とは、物質が電子を奪われる化学反応のことです。電子を奪われた分子は不安定になり、本来の形や機能を保てなくなります。体の中でこの反応が過剰に進むと、細胞をつくる脂質・タンパク質・DNAがダメージを受けます。抗酸化作用は、この酸化の連鎖にブレーキをかけるはたらき全体を指す言葉です1

「体がサビる」とはどういうことか

鉄が空気中の酸素と反応して錆びるように、体の構成成分も酸化によって少しずつ変質します。この様子を指して、健康情報ではよく「体がサビる」と表現されます。ただしこれは比喩であり、体の中で実際に起きているのは、活性酸素が細胞膜の脂質やタンパク質、DNAから電子を奪う化学反応です1

酸化されたタンパク質は本来のはたらきを保てなくなり、DNAの酸化は修復の負担を増やします。こうした酸化ダメージの蓄積については、加齢に伴うさまざまな変化との関わりが研究されてきました1。なお、活性酸素の主な発生源であるミトコンドリアについては、別記事で詳しく扱う予定です。

活性酸素との関係 ― 悪者と言い切れない理由

抗酸化作用を理解するうえで欠かせないのが、相手役である活性酸素の性質です。活性酸素は、呼吸で取り込んだ酸素の一部が、主にミトコンドリアでのエネルギー産生の過程で変化して生まれます。紫外線、喫煙、過度な飲酒、激しい運動などによっても、発生が増えることが知られています2

見落とされがちですが、活性酸素は「ただの悪者」ではありません。適度な量の活性酸素は、免疫細胞が病原体を攻撃する武器として、また細胞同士の情報伝達(シグナル)の担い手として、体に必要な仕事をしています2。問題になるのは、発生量が処理能力を上回り、酸化ストレスの状態に傾いたときです。

老化さん用語解説
酸化ストレス
活性酸素の発生量が、体の抗酸化能力(処理する力)を上回った状態。細胞の脂質・タンパク質・DNAへの酸化ダメージが進みやすくなる。

つまり抗酸化作用の役割は、活性酸素をゼロにすることではなく、発生と処理のバランスを保つことにあります。この視点は、記事後半の「多く摂ればよいのか」という問いを考えるうえでも重要になります。活性酸素そのものの詳しいしくみは、こちらの記事で解説しています。

「抗酸化力」という言葉との違い

似た言葉に「抗酸化力」があります。厳密な定義の区別なく使われることも多いのですが、一般には、抗酸化作用が「酸化を抑えるはたらきそのもの」を指すのに対し、抗酸化力は「そのはたらきの強さ」というニュアンスで使われます。食品の宣伝では「抗酸化力◯◯倍」といった数値も見かけますが、その解釈には注意が必要です。詳しくは後半の「『抗酸化力の数値』をどう読むか」で説明します。


体は自前の抗酸化システムを持っている

「抗酸化作用のある食べ物」の話に入る前に、押さえておきたい事実があります。私たちの体は、外から抗酸化物質を摂らなくても、活性酸素を処理する専用の酵素を自前で備えているということです。むしろ、処理の主力はこの自前の酵素群のほうです。

代表的な抗酸化酵素が、SOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼの3つです。工場の処理ラインのように連携して、活性酸素を段階的に無害化していきます。

SOD ― 最初の関門を担う酵素

SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)は、活性酸素の中でも最初に大量発生する「スーパーオキシド」を、過酸化水素と酸素に変換する酵素です。1969年にマッコードとフリドヴィッチという2人の研究者によって発見され、「生体は酵素で活性酸素を処理している」ことを示す研究の出発点になりました3

SODが働くには、銅・亜鉛・マンガンといったミネラルが構成要素として必要です4。後述する「ミネラルが抗酸化を支える」という話は、この構造に由来します。

カタラーゼ ― 過酸化水素を水に変える

SODの仕事で生じた過酸化水素も、放置すればより反応性の高い活性酸素のもとになります。これを引き受けるのがカタラーゼです。カタラーゼは過酸化水素を水と酸素に分解する酵素で、非常に速い反応速度を持つことが知られています5

グルタチオン系 ― 細胞内で最も豊富な抗酸化物質

もうひとつの処理経路が、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)という酵素と、グルタチオンという小さな分子のペアです。GPxは、グルタチオンから電子を借りる形で、過酸化水素や酸化された脂質を無害化します6。グルタチオンはアミノ酸3つがつながった分子で、細胞内で最も豊富に存在する抗酸化物質として、体内で日々合成されています7

なお、哺乳類のGPxは8種類が知られており、そのうち主要なものはセレンを含む酵素です6。ここでも「酵素+ミネラル」の組み合わせが登場します。

これらを一括で動かす「Nrf2」というしくみ

SOD、カタラーゼ、グルタチオン系。これらの防御部隊には、まとめて指揮する司令塔がいます。それが転写因子のNrf2(エヌアールエフツー)です。

老化さん用語解説
転写因子
DNAの決まった領域に結合し、特定の遺伝子の発現(タンパク質の設計図を読み出す量)を増減させるタンパク質。

Nrf2は、細胞が酸化ストレスを感知すると活性化し、抗酸化酵素や解毒酵素の遺伝子スイッチを一斉にオンにします8。個々の酵素を別々に増やすのではなく、防御網全体を一括で立ち上げる点が特徴です。

体の抗酸化を考えるとき、「何を食べるか」の前に「自前の防御網が正常に応答できるか」という視点が必要なのは、このしくみがあるためです。Nrf2の分子メカニズム(Keap1との関係など)は、Nrf2の解説記事で詳しく扱っています。

加齢とともに防御力はどう変わるか

この自前の抗酸化システムは、一生同じ性能を保つわけではありません。加齢に伴って、動物実験ではグルタチオンの合成能力が低下することが報告されており9、Nrf2の応答性についても加齢に伴う低下が報告されています10

つまり、若いころは十分だった「発生と処理のバランス」が、年齢とともに崩れやすい方向へ傾いていくということです。酸化ストレスへの防御は、世界の老化研究の枠組みでも主要テーマのひとつとして扱われています。老化研究の全体像はAGING HALLMARKSの解説記事で紹介しています。


食べ物から摂る抗酸化成分(概要)

自前のシステムがあるなら、食事から摂る抗酸化成分にはどんな意味があるのでしょうか。現在の標準的な見方では、食事由来の成分は自前の防御網を「補う」役割と位置づけられています1。ここでは代表的な成分を系統別に整理します。個々の食べ物のくわしい紹介は、別記事で扱う予定です。

ビタミンC・E・A(β-カロテン)

抗酸化ビタミンの代表格です。水に溶けるビタミンCは細胞の内外の水分の多い場所で、脂に溶けるビタミンEは細胞膜の中で、それぞれ活性酸素に電子を渡して連鎖的な酸化を止めるはたらきが研究されています11。β-カロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変換される色素成分で、緑黄色野菜に多く含まれます。

ポリフェノール・カテキン・アントシアニン

緑茶のカテキン、ベリー類のアントシアニン、コーヒーのクロロゲン酸などは、いずれもポリフェノールと総称される植物成分です。試験管内での抗酸化作用に加え、体内では防御系のシグナルに影響する可能性も議論されています12

亜鉛・セレン ― 抗酸化酵素を助けるミネラル

亜鉛やセレンは、それ自体が活性酸素を消去するというより、抗酸化酵素の構成要素・補助因子として働きます。前述のとおり、SODは銅・亜鉛・マンガンを4、グルタチオンペルオキシダーゼ(セレン含有型)はセレンを必要とします613。ただしセレンについては、不足も過剰も望ましくないというU字型の関係が指摘されており、摂取状況が十分な人がさらにサプリメントで補うことは推奨されていません13。ミネラルは「不足させないこと」が基本と整理されています。

イソチオシアネート(わさび・アブラナ科由来)

ブロッコリーやわさびなど、アブラナ科の植物に含まれる辛味成分の一群がイソチオシアネートです。ブロッコリースプラウトのスルフォラファンが代表格で、活性酸素を直接消去するのではなく、前述のNrf2を活性化して自前の抗酸化システム側を立ち上げる作用が研究されてきました14

日本産本わさび由来のヘキサラファン(6-MSITC)も、イソチオシアネートの一種です。基礎研究ではNrf2を2つの経路で活性化することが報告されているほか15、60歳以上の健常な方を対象に記憶機能を調べたヒト試験も行われています16(この試験では酸化ストレス指標は測定されていません)。詳しくは高齢者を対象とした臨床試験の解説記事酸化ストレス指標を調べた探索研究の解説記事で扱っています。本わさびと西洋わさびの違いはこちらの記事にまとめています。

活性酸素と直接反応する「直接型」のビタミンなどに対し、イソチオシアネートは体の防御網そのものを起動する「間接型」とも言える系統です。抗酸化の全体像を捉えるうえで、押さえておきたい存在です。


抗酸化物質は多く摂れば良いのか

ここまで読むと、「では抗酸化物質をできるだけたくさん摂ればいいのでは」と考えたくなります。しかし、この発想を大規模な臨床試験で検証した結果は、その期待とは異なるものでした。

大量摂取の試験で見られたこと

代表例が、β-カロテンのサプリメントを用いた2つの大規模試験です。フィンランドの男性喫煙者約2万9千人を対象としたATBC試験では、β-カロテン(1日20mg)を平均6年あまり摂取した群で、肺がんの発生率がプラセボ(偽薬)群より18%高いという結果が報告されました17。米国のCARET試験(喫煙者やアスベスト曝露歴のある約1万8千人が対象)でも、β-カロテンとビタミンAを併用した群で肺がんのリスクが28%高く、試験は予定より21か月早く中止されています18

さらに、抗酸化サプリメント全般のランダム化比較試験68件・約23万人分をまとめた2007年のメタ解析では、全体としては死亡率の低下は確認されませんでした。さらに、バイアスリスクの低い47件に絞った解析では、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンEを摂取した群でむしろ死亡率がやや高いという結果が報告されています19

「体に良いはずの成分を濃縮して大量に摂ったら、良い結果にならなかった」。この事実は、抗酸化を考えるうえで避けて通れない教訓になっています。

食事からの摂取が基本とされる理由

こうした結果を踏まえ、厚生労働省の情報サイトeJIM(「統合医療」情報発信サイト)は、抗酸化物質のサプリメントについて慎重な立場を示しています。健康な人が病気の予防を目的として抗酸化サプリメントを大量に摂ることを支持する科学的根拠は乏しく、野菜や果物を豊富に含む食事そのものの価値が強調されています20

野菜や果物を多く食べる人で健康状態が良好な傾向は多くの研究で観察されていますが、その理由が「抗酸化物質のおかげ」なのか、他の栄養素や食物繊維、食生活全体の影響なのかは、まだ切り分けられていません20。特定の成分だけを大量に取り出して摂ることと、食品として摂ることは、体にとって同じではない可能性がある――これが大規模試験から得られた整理です。

また、先に述べたとおり、活性酸素は情報伝達などの役割も担うため、「ゼロにするほど良い」わけでもありません2。「不足しないよう食事で幅広く摂り、過剰を目指さない」が、現時点の研究から言える現実的な結論です。

「抗酸化力の数値」をどう読むか

食品の「抗酸化力」を数値化する指標として、ORAC(活性酸素吸収能力)という測定法があります。かつて米国農務省(USDA)は食品ごとのORAC値データベースを公開していましたが、2012年にこれを撤回しました。試験管内で測った抗酸化力が体内での働きを示すとは言えないこと、数値が宣伝に誤用されていたことが、理由として挙げられています21

「抗酸化力◯◯倍」のような数値の多くは、測定条件しだいで大きく変わる試験管内の値です。数値の大小だけで食品やサプリメントを選ぶことには、あまり意味がないと考えたほうがよいでしょう。


日常で意識できること

最後に、抗酸化という観点から日常で意識できることを整理します。ポイントは、「防御を高める」以前に「無駄な発生を増やさない」ことです。

活性酸素を増やしすぎない

活性酸素の発生を増やす要因としては、紫外線、喫煙、過度な飲酒などが知られています2。日焼け対策をする、タバコを控える、飲酒量を見直す。地味に見えますが、発生源を減らすことは、防御側の負担をそのまま軽くすることにつながります。

食事の組み立て方

特定の「スーパーフード」に頼るのではなく、色の異なる野菜・果物を組み合わせて、抗酸化ビタミン・ポリフェノール・ミネラルを幅広く摂ることが、遠回りのようで合理的です20。抗酸化成分ごとに、働く場所(水分の多い場所・細胞膜の中・酵素の中)が異なるためです。

睡眠と適度な運動

意外に思われるかもしれませんが、適度な運動は一時的に活性酸素を増やすことで、かえって体の抗酸化応答を鍛える方向に働くことが報告されています22。これはホルミシスと呼ばれる考え方です。

老化さん用語解説
ホルミシス
少量の刺激(酸化ストレスなど)が、かえって生体の適応反応を引き出し、有益に働く現象。

一方、睡眠不足は体の酸化ストレスを高める方向に働くことが報告されています23。激しすぎない運動を習慣にすること、そして十分な睡眠をとることは、自前の抗酸化システムのコンディションを保つ土台と言えます。


まとめ

  • 抗酸化作用とは、活性酸素のはたらきを抑え、脂質・タンパク質・DNAの酸化ダメージを防ぐはたらきの総称です
  • 「体がサビる」は比喩であり、実際に起きているのは活性酸素が電子を奪う化学反応です。活性酸素には情報伝達などの役割もあり、ゼロにすることが目標ではありません
  • 体にはSOD・カタラーゼ・グルタチオン系という自前の抗酸化酵素が備わっており、転写因子Nrf2がこれらを一括で制御しています。この防御力は加齢とともに低下することが報告されています
  • 食事から摂る抗酸化成分(ビタミン、ポリフェノール、ミネラル、イソチオシアネートなど)は、自前のシステムを補う位置づけです
  • 大規模試験では、抗酸化サプリメントの大量摂取が期待どおりの結果を示さなかったことが報告されており、食事からの摂取が基本とされています

抗酸化を考えることは、「何かを足す」ことである前に、体に備わった防御のしくみを知り、その足を引っ張らない生活を選ぶことなのかもしれません。


[ 引用・参考文献 ]

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  4. Zelko IN, Mariani TJ, Folz RJ. Superoxide dismutase multigene family: a comparison of the CuZn-SOD (SOD1), Mn-SOD (SOD2), and EC-SOD (SOD3) gene structures, evolution, and expression. Free Radical Biology and Medicine. 2002;33(3):337-349. ↩︎
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  20. 厚生労働省eJIM(「統合医療」に係る情報発信等推進事業). 抗酸化物質[各種施術・療法-一般]. https://www.ejim.mhlw.go.jp/public/overseas/c02/02.html ↩︎
  21. U.S. Department of Agriculture, Agricultural Research Service. Oxygen Radical Absorbance Capacity (ORAC) of Selected Foods, Release 2(2012年のデータベース撤回に関する説明). https://www.ars.usda.gov/northeast-area/beltsville-md-bhnrc/beltsville-human-nutrition-research-center/nutrient-data-laboratory/docs/oxygen-radical-absorbance-capacity-orac-of-selected-foods-release-2-2010/ ↩︎
  22. Done AJ, Traustadóttir T. Nrf2 mediates redox adaptations to exercise. Redox Biology. 2016;10:191-199. ↩︎
  23. Trivedi MS, et al. Short-term sleep deprivation leads to decreased systemic redox metabolites and altered epigenetic status. PLOS ONE. 2017;12(7):e0181978. ↩︎

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