活性酸素とは|なぜ発生する?増える原因と酸化ストレスの関係
「体のサビ」――健康や老化の話題で、活性酸素はしばしばこう呼ばれ、悪者として登場します。しかし、活性酸素は本当にただの悪者なのでしょうか。
活性酸素とは、呼吸で取り込んだ酸素の一部が、他の物質を酸化させる力の強い状態に変化したものです。細菌やウイルスから体を守る働きがある一方、紫外線やストレス、加齢などで増えすぎると細胞を傷つけることが報告されています1。
本記事では、活性酸素がどこで・なぜ発生するのか、増えすぎると体で何が起きるのか、そして「酸化ストレス」という言葉の正確な意味までを、研究論文を手がかりに整理します。
この記事でわかること
- 活性酸素の定義と、代表的な4つの種類
- 主な発生源の一つがミトコンドリアであること、免疫細胞が意図的につくる場合もあること
- 活性酸素が増えすぎたときに細胞で起きること
- 「酸化ストレス」という言葉の意味と、体に備わる抗酸化のしくみ(SOD・カタラーゼ・Nrf2)
- 活性酸素を増やしすぎないために日常で意識したいこと
活性酸素とは ― 酸化させる力が強くなった酸素
呼吸で取り込んだ酸素の一部が変化したもの
私たちが呼吸で取り込んだ酸素の大部分は、細胞の中でエネルギーをつくるために使われます。ところが、その過程で酸素のごく一部が電子を余分に受け取るなどして、通常の酸素よりも「他の物質を酸化させる力」が強い状態に変化します。こうして生まれた分子の総称が「活性酸素」です1。
「酸化」とは、物質が電子を奪われる化学反応のことです。鉄が錆びるのも、切ったリンゴの断面が茶色くなるのも酸化の一例です。活性酸素は、まわりの分子から電子を奪う力が強いため、体の中で同じような変化を引き起こしやすい存在といえます。
活性酸素にはいくつかの種類がある
「活性酸素」はひとつの物質の名前ではなく、性質の異なる複数の分子の総称です。代表的なものとして、次の4つが挙げられます2。
- スーパーオキシド:ミトコンドリアなどで最初に生まれることが多い、いわば活性酸素の「入口」となる分子
- 過酸化水素:スーパーオキシドが変換されて生じる。比較的安定で、細胞の中を移動しやすく、後述するように細胞同士の情報伝達の主役にもなる
- ヒドロキシルラジカル:活性酸素の中で最も反応性が高く、近くの分子を手当たり次第に酸化する
- 一重項酸素:紫外線などの光エネルギーによって生じやすい
このうちスーパーオキシドとヒドロキシルラジカルは、フリーラジカル※と呼ばれる特に反応しやすいグループに属します。種類によって「どこで生まれ、どのくらい反応しやすいか」が異なるため、体への影響も一様ではありません。
用語解説- フリーラジカル
- 対(ペア)になっていない電子を持つ原子や分子の総称。他の分子から電子を奪って安定しようとするため、反応性が高い。
では、これらの活性酸素は、体のどこで生まれているのでしょうか。
活性酸素はなぜ発生するのか
主な発生源はミトコンドリア
活性酸素の主な発生源は、細胞の中にある「ミトコンドリア」です。ミトコンドリアは、酸素を使って糖や脂肪からATP※というエネルギー分子をつくり出す、いわば細胞の発電所です。このエネルギー生産は、電子伝達系※という仕組みの中で電子をリレーのように受け渡しながら進みます。このリレーの途中で電子の一部が漏れ出し、近くの酸素と反応してスーパーオキシドが生じます3。
用語解説- ATP(アデノシン三リン酸)
- 細胞が活動するためのエネルギーを蓄えて受け渡す分子。「エネルギーの通貨」とも呼ばれる。
- 電子伝達系
- ミトコンドリアの内膜にある、電子の受け渡しを利用してATPを合成する一連の仕組み。
ここで意外なのは、「エネルギーをつくればつくるほど活性酸素が出る」わけではない、という点です。むしろ電子の漏れが増えやすいのは、電子は流れ込んでくるのにATPをあまりつくっていない=リレーが滞っているときだと報告されています。エネルギーを活発につくっている状態では、スーパーオキシドの産生はかえって少なくなります3。いずれにせよ、活性酸素は呼吸して生きている限り、誰の体でも毎日発生しているものであり、特別な異常があるから生まれるものではありません。
ミトコンドリアの働きについては、近日公開予定の記事で詳しく解説します。
免疫細胞が意図的につくる活性酸素
活性酸素は「漏れ出す」だけではありません。体があえて武器としてつくる場面もあります。好中球やマクロファージといった免疫細胞は、細菌などの異物を取り込むと、それを「ファゴソーム」という小さな袋に閉じ込め、その内側でNADPHオキシダーゼという専用の酵素を働かせて大量のスーパーオキシドを放出します。スーパーオキシドはそこで過酸化水素に変わり、さらにミエロペルオキシダーゼという酵素によって、殺菌力の非常に高い次亜塩素酸へと変換されます4。活性酸素は、体にとって強力な武器でもあるのです。
副産物として漏れ出す一方で、防御のために意図的につくられもする――この事実は、活性酸素が単純な「悪者」ではないことを示しています。次に、この二面性を詳しく見ていきます。

良い面と悪い面 ― 活性酸素の二面性
体を守る働き(免疫・シグナル伝達)
前述のとおり、活性酸素は免疫細胞が細菌やウイルスを攻撃する際の武器として働きます4。さらに近年の研究では、適度な量の活性酸素は、細胞同士が情報をやり取りする「シグナル分子」としても機能し、血管の調節や運動への適応といった正常な生理反応に関わることが報告されています1。
増えすぎたときに起きること
一方で、活性酸素が体の処理能力を超えて増えると、細胞を構成する主要な分子が酸化されはじめます5。
- DNA:遺伝情報が書き込まれた分子が酸化され、傷(損傷)が生じる
- 脂質:細胞を包む膜の脂質が酸化され、過酸化脂質※に変わる
- タンパク質:酵素などのタンパク質が酸化され、本来の働きを失う
用語解説- 過酸化脂質
- 脂質が活性酸素などによって酸化されてできる物質。細胞膜の働きを損なうほか、周囲の分子をさらに酸化する連鎖反応の起点にもなる。
こうした酸化によるダメージの蓄積は、老化の進行や、動脈硬化・がん・糖尿病といった生活習慣病のリスクとの関連が報告されています5。ただし、これらは「活性酸素だけが原因」という意味ではありません。そもそも過剰な活性酸素が組織の傷害を引き起こす原因なのか、傷害が起きた結果として活性酸素が増えているのかについても、現在まだ議論が続いています5。多くの要因が絡み合う中の一つとして研究されている段階だと理解しておくのが正確です。
活性酸素が増える原因
活性酸素の発生は生きている限り避けられないものですが、その量は生活環境や習慣によって大きく変わります。増える要因として研究されている代表的なものを見ていきます。
紫外線・強い日差し
紫外線が皮膚に当たると、そのエネルギーによって皮膚の中で一重項酸素などの活性酸素が発生します6。紫外線を浴びる機会が多いほど皮膚の酸化ダメージは蓄積しやすく、肌の加齢変化との関連が報告されています6。
喫煙・過度な飲酒
タバコの煙には、それ自体に多量のフリーラジカルが含まれることが古くから報告されています7。また、アルコールが肝臓で分解される過程でも活性酸素が発生します。アルコールは活性酸素を増やすだけでなく、それを処理する抗酸化物質のレベルを下げる方向にも働くことが報告されており、とくに肝臓で酸化ストレスが生じやすいと整理されています8。
精神的・身体的なストレス
強いストレスも活性酸素と無関係ではありません。閉経後の女性48名を対象に、認知症の配偶者を介護している人(慢性的なストレス下にある人)とそうでない人を比べた研究があります。慢性的なストレス下にあるグループでは、ストレス課題に臨む前の段階でのコルチゾール上昇が大きい人ほど、体内の酸化ダメージ指標が高い、という関連が確認されました9。 興味深いのは、慢性的なストレスが少ないグループでは逆の傾向が見られた点です。日々のストレスを「ほとんど感じない」人よりも「中くらいに感じている」人のほうが、酸化ダメージがむしろ低かったのです9。研究チームはこれを、適度なストレスが体の回復力を高める「ユーストレス(良いストレス)」の一例として位置づけています。ストレスそのものが悪なのではなく、逃れられない状態が続くことが問題になる、という見方です。
激しすぎる運動
運動中は呼吸量が増え、筋肉での酸素消費が急増します。それに伴って活性酸素の発生も増えることが知られており、特に高強度で長時間の運動は一時的に酸化ダメージを高めると報告されています10。ただし同じ総説は、わずかな量の活性酸素は筋肉が正常に力を出すためにむしろ必要であり、多すぎる場合にのみ収縮機能が落ちて筋力低下や疲労につながる、とも整理しています。ここでも「ゼロが良い」わけではありません。
加齢
年齢を重ねると、ミトコンドリアの機能が低下して電子の漏れが増えやすくなると考えられています。酸化ダメージの蓄積は、老化の進行に関わる要因の一つとして長年研究されてきました11。ただし、この考え方(フリーラジカル老化説)は現在では単純な形では支持されていません。抗酸化酵素を人工的に増やした動物で寿命が延びなかった例なども報告されており、酸化ストレスは老化の唯一の原因ではなく、複数の要因の一つとして位置づけ直されつつあります1。
老化を進める要因の全体像は、以下の記事で詳しく解説しています。 老化の研究指標「AGING HALLMARKS」って何? ― 世界の老化研究を動かすフレームワーク
酸化ストレスとは ― 発生と防御のバランス
活性酸素の発生が増えても、体には防御のしくみが備わっています。この「発生」と「防御」のバランスを表す言葉が「酸化ストレス」です。
「酸化ストレス」という言葉の意味
酸化ストレスとは、活性酸素などの酸化物質の発生が体の抗酸化防御の能力を上回り、バランスが酸化側に傾いた状態を指す言葉です12。ドイツの生化学者ヘルムート・ジースが提唱した概念で、現在の酸化研究の土台になっています12。なお近年の研究では、この考え方をさらに一歩進めて、活性酸素が情報伝達などの正常な役割を果たしている状態を「酸化的ユーストレス(良いストレス)」、防御を上回って分子に損傷を与える状態を「酸化的ディストレス(悪いストレス)」と呼び分ける整理が提案されています1。本記事がここまで見てきた活性酸素の二面性は、この2つの言葉で捉え直すことができます。
ポイントは、酸化ストレスが「活性酸素がある状態」ではなく「バランスが崩れた状態」を意味することです。活性酸素が発生していても、防御が追いついていれば酸化ストレスとは呼びません。だからこそ、発生を増やしすぎない工夫と、防御力を保つ工夫の両方が意味を持ちます。
体が持つ抗酸化のしくみ(SOD・カタラーゼ・Nrf2)
私たちの体には、活性酸素を処理する専門の酵素が最初から備わっています13。
- SOD(スーパーオキシドディスムターゼ):スーパーオキシドを過酸化水素に変換する、防御の第一走者
- カタラーゼ:過酸化水素を水と酸素に分解する
- グルタチオンペルオキシダーゼ:グルタチオンという抗酸化物質を使って過酸化水素などを処理する
さらに、これらの抗酸化酵素の遺伝子発現をまとめて立ち上げる司令塔として、Nrf2(エヌアールエフツー)という転写因子が働いていることがわかっています14。Nrf2は酸化ストレスを感知すると、抗酸化・解毒に関わる多数の遺伝子のスイッチを一斉に入れます。詳しいしくみは以下の記事で解説しています。 Nrf2とは?体の酸化ストレスを防ぐ「防御司令塔」のしくみをわかりやすく解説

活性酸素を増やしすぎないための生活
活性酸素の発生をゼロにすることはできず、免疫などの役割を考えれば、目指すべきでもありません。意識したいのは「増やしすぎないこと」と「防御力を保つこと」の2つです。研究が積み重ねられている日常の工夫を紹介します。
食事 ― 抗酸化作用が研究されている成分を含む食品
緑黄色野菜や果物に含まれるビタミンC・E、ポリフェノール、アブラナ科野菜のイソチオシアネート類などは、抗酸化に関連して研究されている代表的な食品成分です15。ただし、これらの働き方は一様ではありません。ビタミンCやEのように活性酸素を直接受け止めるものと、本わさび由来のイソチオシアネート類のように、前述のNrf2を介して体自身の防御酵素を立ち上げるという間接的な働きが研究されているものがあります15。注意しておきたいのは、抗酸化成分をサプリメントとして大量に摂れば良いという単純な話ではない、という点です。本記事が土台にしているレビューは、低分子の抗酸化化合物によって体内の活性酸素をまとめて取り除こうとする試みが、臨床試験では期待された成果を上げてこなかったと整理しています1。抗酸化防御の主役はあくまで体に備わった酵素であり、低分子の抗酸化物質ではない、とも指摘されています12。特定の成分だけに頼るのではなく、まずはさまざまな食材をバランスよく食事から摂ることが基本です。
本わさび由来のイソチオシアネートであるヘキサラファン(6-MSITC)についても、酸化ストレス指標に関する探索研究が行われています。 日本産本わさびの希少成分「ヘキサラファン」の身体の酸化ストレス指標に関する探索研究
適度な運動 ― 軽い刺激が防御を鍛える
激しすぎる運動は酸化ダメージを一時的に高める一方、無理のない強度の運動を続けると、運動で生じる軽い酸化刺激が体の抗酸化応答をかえって高める方向に働くことが報告されています16。これはホルミシス効果※と呼ばれる現象で、ウォーキングや軽いジョギングのような続けやすい運動を習慣にすることが手がかりになります。この考え方を裏づける印象的な研究があります。健康な男性39名に4週間の運動を行ってもらい、片方のグループにはビタミンCとEのサプリメントを併用してもらったところ、運動によるインスリン感受性の改善も、体内の抗酸化酵素(SODやグルタチオンペルオキシダーゼ)の増加も、サプリメントを摂らなかったグループでのみ確認されました18。運動で生じるわずかな酸化刺激そのものが、体に「防御を強化せよ」という合図を送っていた、と解釈されています。
用語解説- ホルミシス効果
- 少量の刺激が、かえって生体に有益な反応をもたらす現象。
睡眠 ― 不足は酸化に傾く要因に
若年成人19名を対象に、一晩まったく眠らせない条件で調べた研究では、体内の主要な抗酸化物質であるグルタチオンやATPが有意に低下したことが報告されています17。これは徹夜という強い条件での結果で、日常的な寝不足にそのまま当てはまるとは限りませんが、睡眠が体の抗酸化の側を支えていることを示す一例です。十分な睡眠は、酸化によるダメージから体を回復させる時間を確保するうえでの前提条件といえます。
紫外線・喫煙を避ける
発生の引き金そのものを減らす視点も重要です。日傘・帽子・日焼け止めなどによる紫外線対策、そして禁煙は、活性酸素を増やす要因を根元から減らすアプローチです67。
抗酸化作用との関係
ここまで登場した「抗酸化」とは、活性酸素による酸化を抑える働きの総称です。体に備わった抗酸化酵素によるものと、食品成分などによるものがあり、両者が組み合わさって体の酸化バランスを支えています。抗酸化作用のしくみや、抗酸化作用が研究されている成分の詳細は、別の記事で詳しく解説する予定です。
まとめ
- 活性酸素とは、呼吸で取り込んだ酸素の一部が、他の物質を酸化させる力の強い状態に変化した分子の総称です
- 主な発生源はミトコンドリアでのエネルギー生産であり、生きている限り発生する副産物です。免疫細胞が防御のために意図的につくる場合もあります
- 適度な量は免疫やシグナル伝達に役立つ一方、増えすぎるとDNA・脂質・タンパク質が酸化され、老化や生活習慣病のリスクとの関連が報告されています
- 紫外線・喫煙・過度な飲酒・ストレス・激しすぎる運動・加齢は、活性酸素を増やす要因として研究されています
- 発生が防御を上回った状態が「酸化ストレス」です。バランスの良い食事・適度な運動・十分な睡眠・紫外線や喫煙を避けることが、バランスを保つ日常的な手がかりになります
活性酸素は、敵でも味方でもなく、付き合い方が鍵になる存在です。しくみを知り、増やしすぎない生活を意識することが、健やかな毎日への第一歩になります。
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