本わさびと西洋わさびは何が違う? ヘキサラファンとの関係を解説

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投稿日:2026.07.30  |  更新日:2026.07.30  |  約9分で読めます

スーパーで手に取るチューブわさびと、飲食店で目の前ですりおろしてくれる本わさび。同じ「わさび」でも、実は原料になる植物が違ったり、使う部位が違ったりすることをご存知でしょうか。

この違いがとくに大きく出るのが、本わさび由来の成分「ヘキサラファン(6-MSITC)」です。本メディアではこの成分の研究を何度か取り上げてきましたが、今回は作用の話ではなく、「そもそもヘキサラファンはどのわさびに含まれているのか」という、もっと手前の話をしたいと思います。とくに、スーパーでよく見かける常温保存タイプのチューブわさびから、どのくらい期待できるのかという点です。

さきに結論を書いてしまうと、ヘキサラファンは本わさび、それも根茎に多く含まれています。西洋わさびでは含量が低いという報告があり、加工わさび製品では本わさび根茎の配合率などによって含量が大きく変わります。西洋わさびを主に使った製品もある一般的な常温保存タイプのチューブわさびは、ヘキサラファンの摂取源としては期待しにくい。そう考えておいてよさそうです。

この記事でわかること

  • 本わさびと西洋わさびの違い
  • ヘキサラファンが本わさびのどの部位に多いのか
  • 常温保存タイプのチューブわさびで、ヘキサラファンを摂りにくい理由
  • わさびを選ぶときに見ておきたい原材料表示

本わさびと西洋わさびは何が違う?

本わさびも西洋わさびもアブラナ科の仲間で、すりおろすとツンとくる辛味が立ち上がります。その意味では似た存在ですが、植物としては別の種類です。

本わさびは日本原産の植物

本わさびの学名は Eutrema japonicum。日本原産の多年草で、清流や水田で育てられるイメージを持つ方も多いでしょう。食用としてなじみ深いのは、地表付近で太く育った「根茎」の部分です。

この根茎を細かくすりおろすと、辛味だけでなく、鮮やかな香りやほのかな甘味まで感じられる奇麗な風味になります。

老化さん用語解説
根茎
地下または地表付近を横に伸びる茎のことです。見た目は根に似ていますが、植物学上は茎にあたります。

西洋わさびはホースラディッシュとも呼ばれる

一方の西洋わさびは、学名を Armoracia rusticana といい、ホースラディッシュの名でも知られています。同じアブラナ科ではあるものの、食用にするのは主に太い根の部分です。

西洋わさびにもはっきりとした辛味があり、価格も比較的安定しています。加工しやすいことから、チューブわさびや粉わさびの原料として使われることも少なくありません。両者の辛味には共通する成分もありますが、香りをつくるイソチオシアネートの種類や構成は同じではありません。1

老化さん用語解説
イソチオシアネート
わさびやブロッコリーなどのアブラナ科植物に含まれる成分群です。植物をすりおろしたり刻んだりすると生成し、辛味や香りのもとになります。

本わさびと西洋わさびの違い

普段はどちらも「わさび」で十分ですが、ヘキサラファンの話になると、この二つを分けて考えたほうが良さそうです。


ヘキサラファンは本わさびの「根茎」に多い

本メディアでたびたび登場するヘキサラファンは、正式には6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)という名の成分です。

どんな働きが研究されているのかは、「本わさび由来ヘキサラファン(6-MSITC)はなぜ注目されるのか」で詳しくご紹介しています。ここではその話は繰り返さず、「どこに、どのくらい含まれているのか」だけを見ていきましょう。

5品種すべてで根茎の含量が最も多かった

2004年に発表された研究では、本わさび5品種を対象に、根茎・根・茎・葉のそれぞれに含まれるヘキサラファンの量が調べられました。結果は共通していて、どの品種でも根茎が最も多く、次いで根、茎、葉と続きました。2

同じ本わさびでも品種による差はあり、根茎のヘキサラファン含量が最も多い品種と最も少ない品種を比べると、約1.6倍の開きがありました。2 「本わさびならどれも同じ」とは限らないということです。

西洋わさびのヘキサラファン含量は低かった

同じ研究では西洋わさびのヘキサラファン含量も測定されており、こちらは低いことが報告されています。2

西洋わさびにもしっかりとした辛味はあります。ただ、あのツンとくる辛味の主役はアリルイソチオシアネート(AITC)という別のイソチオシアネートで、こちらは本わさびにも西洋わさびにも共通して含まれます。1 ヘキサラファンは辛味の主役というより、本わさびの根茎に多く含まれる成分です。

辛さとヘキサラファンの多さはイコールではないので、口にしたときの刺激が強いからといって、ヘキサラファンをたっぷり含んでいるとは限りません。


チューブ入りのわさび

一般的な常温保存のチューブわさびを摂取源と考えにくい理由

ここまでの違いを踏まえると、スーパーの棚に並ぶような一般的な常温保存タイプのチューブわさびを、ヘキサラファンの摂取源としては考えにくい理由が見えてきます。理由は大きく3つあります。

理由1:西洋わさびを使っている製品がある

チューブわさびと一口に言っても、中身の原料は製品ごとにさまざまです。本わさびだけのものもあれば、西洋わさびを使ったもの、両方をブレンドしたものもあります。

西洋わさびのヘキサラファン含量は低いと報告されていますから、西洋わさびが主役の製品では、本わさび根茎と同じような摂取は期待しにくくなります。2

理由2:本わさび入りでも、使う部位や配合率が違う

先の研究では、市販の加工わさび製品25種類についてもヘキサラファン含量が測られています。こちらはメーカーや製品の種類によって含量に大きな幅がありました。2

研究チームは、その幅の背景に本わさび原料の配合率、とくにヘキサラファンを多く含む根茎の配合率があると見ています。2 ただしこの分析は2004年のもので、今売られている個々の製品の配合や含量をそのまま示すものではないため、実際の商品は最新の原材料表示や商品情報で確かめる必要があります。

つまり、表示に「本わさび」とあっても、それだけでヘキサラファンの多少を読み取るのは難しいということです。本わさびがどの程度、どの部位が使われているかで変わってきます。

理由3:「チューブわさび」はひとくくりではない

チューブ入りという容器の形だけでは、中身までは判断できません。未開封で常温保存できるタイプもあれば、本わさびを多く使った冷蔵・冷凍タイプもあります。

だからといって「チューブならヘキサラファンはゼロ」と一括りにするのも正確ではありません。なお、今回参照した研究は、常温保存そのものがヘキサラファンを減らすかどうかを調べたものではありません。この研究から言えるのは、加工わさび製品のヘキサラファン含量には大きな幅があり、本わさび根茎の配合率がきいている、というところまでです。2

身近な例で考えると、「果汁入り飲料」と書いてあっても、果汁が10%のものと100%のものとでは中身が違います。わさびも同じで、「わさび」と書かれていても、本わさびと西洋わさびの割合や使う部位によって中身は変わります。


ヘキサラファンを意識するなら、原材料表示のどこを見る?

では、実際にわさびを選ぶときはどこを見ればよいのでしょうか。いくつかの目安を整理しておきます。

「本わさび」か「西洋わさび」かを見る

まずは原材料表示で、本わさびと西洋わさびのどちらが使われているかを確認します。「西洋わさび」「ホースラディッシュ」とあれば、それは本わさびとは別の植物です。複数の原料が並んでいるときは、表示の順番もひとつの手がかりになります。ただし、表示だけからヘキサラファンの正確な含量までは分かりません。

ちなみに、チューブわさびの鮮やかな緑色は、本わさびか西洋わさびかを見分ける手がかりにはなりません。どちらもすりおろした状態では淡い色合いで、市販品の緑色は着色によるものが一般的です。色の濃さで中身を判断するより、原材料表示を確認するほうが確実です。

使う部位や本わさびの割合を見る

商品説明に「本わさび根茎使用」「本わさび100%」などの記載があれば、原料を推し量る手がかりになります。ただし「本わさび使用」という一言だけでは、根茎の配合率までは見えてこないのが難しいところです。ヘキサラファンを意識するなら、成分量が規格化されているかどうかもポイントになります。

食品としてのわさびと、規格化された素材は別もの

本わさびの根茎は確かにヘキサラファンを含みますが、辛味が強く、一度にたくさん口にする食べ方はしません。品種や部位で含量も変わるため、食事から摂れる量にはどうしても幅が出ます。

一方で、研究の場面ではヘキサラファンの量を一定にそろえたわさび抽出物や規格化素材が使われることがあります。食卓で薬味として楽しむことと、研究で一定量を摂ることは、分けて考えておいたほうが良さそうです。

ヘキサラファンについてもっと詳しく知りたい方は、研究全体を整理した「本わさび由来ヘキサラファン(6-MSITC)はなぜ注目されるのか」をあわせてご覧ください。


まとめ

  • 本わさびと西洋わさびは、同じアブラナ科でも別の植物
  • ヘキサラファン(6-MSITC)は、本わさびの中でも根茎に多い
  • 西洋わさびのヘキサラファン含量は低いと報告されている
  • 加工わさび製品のヘキサラファン含量は、本わさび根茎の配合率などで大きく変わる
  • 一般的な常温保存タイプのチューブわさびは、摂取源としては期待しにくい
  • ただし「すべてのチューブがゼロ」という意味ではなく、原料・使用部位・保存形態を見るのが大事

普段何気なく使っているチューブわさびと、すりたての本わさびの根茎は、辛味が似ていても同じものではありません。ヘキサラファンが気になったときは、「わさびと書いてあるか」だけでなく、どの植物の、どの部位が、どのくらい使われているかにちょっと目を向けてみてください。


[ 引用・参考文献 ]

  1. Sultana T, Savage GP, McNeil DL, Porter NG, Martin RJ, Deo B. Comparison of flavour compounds in wasabi and horseradish. Journal of Food, Agriculture and Environment. 2003;1(2):117-121. ↩︎
  2. 村田充良, 宇野みさえ, 永井陽子, 中川多世, 奥西勲. わさびおよび加工わさび製品中の6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート含量. 日本食品科学工学会誌. 2004;51(9):477-482. ↩︎

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