ミトコンドリアを増やす・活性化する方法|加齢による低下と対策

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投稿日:2026.09.09  |  更新日:2026.09.09  |  約14分で読めます

ミトコンドリアは細胞内でエネルギー(ATP)をつくる小器官で、加齢とともに数と機能が低下することが報告されています。活性化には有酸素運動、良質な睡眠、適度な空腹時間、CoQ10や鉄などの栄養素が関わるとされ、研究が進められています。この記事では、混同されやすい「増やす」と「活性化する」の違いも含めて、論文情報をもとに整理します。

ミトコンドリアとは ― 細胞のエネルギーをつくる小器官

ミトコンドリアは、私たちの体を構成するほぼすべての細胞の中に存在する小器官(オルガネラ)です。1つの細胞に数百から数千個含まれ、特に心臓・骨格筋・肝臓・脳といったエネルギー需要の大きい臓器の細胞に多く存在します。外膜と内膜の二重膜構造を持ち、内膜が内側に折りたたまれた「クリステ」と呼ばれる構造の上で、エネルギー産生の中心的な反応が行われています。

もうひとつの特徴は、ミトコンドリアが細胞の核とは別に、独自のDNA(ミトコンドリアDNA)を持っていることです。ミトコンドリアは細胞の状況に応じて分裂・融合を繰り返し、数や形を柔軟に変えながら働いています。つまりミトコンドリアは「固定された部品」ではなく、生活習慣などの刺激に応じて増減し、入れ替わり続ける動的な存在です。この性質こそが、「ミトコンドリアを増やす・活性化する」というテーマが成り立つ理由でもあります1

ATP産生という中心的な働き

食事から得た糖質や脂質は、細胞内で分解されてクエン酸回路などに入り、そこで取り出された電子が、ミトコンドリア内膜の「電子伝達系」に渡されます。この電子の流れを使ってATP(アデノシン三リン酸)を合成する一連の仕組みを「酸化的リン酸化」と呼びます。この仕組みによって、ATPというエネルギー分子に変換されます。ATPは、筋肉の収縮、神経の情報伝達、体温の維持、細胞の合成・修復など、あらゆる生命活動の直接のエネルギー源です。体内で必要とされるATPの量は膨大で、その大部分をミトコンドリアが担っています1。ミトコンドリアが「細胞のエネルギー工場」と呼ばれるのはこのためです。

老化さん用語解説
電子伝達系
ミトコンドリアの内膜にあるタンパク質の集まり。栄養素から取り出した電子をリレーのように受け渡し、そのエネルギーを使ってATPを合成する仕組み。

たとえでいうと、ミトコンドリアは細胞の中の発電所です。食事から得た糖質や脂質は燃料に、電子伝達系は発電のタービンにあたり、つくられた電気(ATP)が筋肉や脳などの活動を動かしています。

活性酸素の主な発生源でもある

一方で、ミトコンドリアはエネルギーを生み出す過程で、活性酸素種(ROS)を発生させる主要な場所でもあります2。電子伝達系を流れる電子の一部が酸素と反応することで活性酸素が生じ、過剰になるとミトコンドリア自身のDNAや膜を傷つけることが知られています。体にはこうした酸化ストレスに対応する防御の仕組み(Nrf2経路など)が備わっており、詳しくはNrf2の解説記事で扱っています。エネルギー産生と酸化ストレスが表裏一体であることは、この後の「質の管理」を理解するうえで重要なポイントです。

「増やす」と「活性化する」は何が違うのか

インターネット検索や書籍では「ミトコンドリアを増やす」「ミトコンドリアを活性化する」という言葉が混在していますが、この2つは厳密には異なる現象を指しています。整理すると、次の2つに分けられます。

  • 数を増やす:新しいミトコンドリアをつくる「ミトコンドリア新生(バイオジェネシス)」
  • 質を保つ:傷んだミトコンドリアを分解・除去して入れ替える「マイトファジー」

「活性化」という言葉は、この両方(あるいはミトコンドリア全体の働きが高い状態)を漠然と指して使われることが多いのですが、研究上は「数」と「質」は別々の仕組みで制御されています。どちらか一方ではなく、両方がうまく回っている状態を目指すことが大切です。

数を増やす ― ミトコンドリア新生とPGC-1α

ミトコンドリア新生の司令塔として知られるのが、PGC-1αという転写コアクチベーターです3。運動によるエネルギー消費や寒冷刺激などで細胞のエネルギーが不足すると、細胞内のエネルギーセンサーであるAMPKが働き、PGC-1αを直接リン酸化して活性化することがマウスの骨格筋を用いた研究で示されています4。PGC-1αは寒冷刺激などによっても誘導され、ミトコンドリアの構成部品をつくる遺伝子群のスイッチをまとめて入れる役割を持つことが報告されています3。その結果として新しいミトコンドリアの合成が進みます。「運動でミトコンドリアが増える」と言われる背景には、この分子メカニズムがあります。

老化さん用語解説
転写コアクチベーター
遺伝子のスイッチを入れるタンパク質(転写因子)を補助して、複数の遺伝子の働きをまとめて高める調整役のタンパク質。

質を保つ ― 傷んだミトコンドリアを入れ替える

数が多くても、傷んで機能が落ちたミトコンドリアが混ざっていては、効率よくエネルギーをつくれないばかりか、活性酸素の発生源が増えることになります。そこで細胞には、傷んだミトコンドリアだけを選んで分解・リサイクルする品質管理の仕組みが備わっています5。これが後述する「マイトファジー」です。新生(つくる)と分解(片づける)のバランスが取れてはじめて、ミトコンドリア全体の質が保たれます。

加齢とともにミトコンドリアはどう変わるか

数と機能の低下を示した研究

加齢に伴うミトコンドリアの変化は、ヒトを対象とした研究でも報告されています。米国メイヨー・クリニックの研究グループが18〜89歳の健常者の骨格筋を調べた研究では、ミトコンドリアのATP産生能力が加齢とともに有意に低下し、ミトコンドリアDNAとmRNAの量、ミトコンドリア関連タンパク質のの含有量も年齢とともに減少していました。併せて、酸化によるDNA損傷の指標が高齢者の筋肉で高いことも示されています6。加齢による体力や代謝の変化の背景要因のひとつとして、ミトコンドリアの数と機能の低下が注目されています。ただし、この低下がどこまで「年齢そのもの」によるものかは、慎重に考える必要があります。同じ研究グループが持久的トレーニングを続けている人と座位中心の人を比較した研究では、トレーニング群では加齢によるミトコンドリア酸化能力の低下が認められませんでした7。加齢による変化と、加齢に伴って身体活動量が減ることによる変化は、分けて考える必要があるということです。ここに、次に述べる有酸素運動の意味があります。

12の老化要因との関係

老化研究の分野では、老化を特徴づける要因を整理した「老化のホールマークス(Hallmarks of Aging)」という枠組みが広く参照されており、2023年の改訂版では12の要因が挙げられています8ミトコンドリア機能不全(mitochondrial dysfunction)はその12要因のひとつに位置づけられており、老化を考えるうえで避けて通れないテーマとされています。12の要因の全体像は、こちらの記事で詳しく解説しています。

有酸素運動 ― もっとも確かなアプローチ

ミトコンドリアを増やす方法として、研究の蓄積がもっとも厚いのが有酸素運動です。

なぜ運動でミトコンドリアが増えるのか

運動によって骨格筋のミトコンドリアが増えることは、1967年にHolloszyがラットの持久トレーニング実験で示して以来、運動生理学の基本的な知見として確立しています9。運動で筋肉のエネルギー需要が高まると、細胞内のエネルギーセンサーであるAMPKなどが働き、前述のPGC-1αが活性化されて、ミトコンドリア新生が促されます3。つまり「エネルギーが足りない」という負荷そのものが、ミトコンドリアを増やす合図になっています。運動とNAD⁺・筋肉パフォーマンスの関係については、こちらの記事でも扱っています。

どのくらいの強度・時間が目安か

公的機関の身体活動ガイドラインが、現実的な目安になります。WHO(世界保健機関)は成人に対して、中強度の有酸素性身体活動を週150〜300分(または高強度を週75〜150分)行うことを推奨しています10。日本でも厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上が目安)行うことを推奨しています11。中強度とは「ややきつい」と感じる程度、たとえば早歩きが典型です。一度に長時間行う必要はなく、細切れでも合計時間を確保し、継続することが重要とされています。あわせて、筋力トレーニングを週2〜3日行うことも推奨されています。(持病のある方や治療中の方は、運動を始める前にかかりつけの医師にご相談ください。)

インターバルトレーニングという選択肢

短時間の高強度運動と休息(または軽い運動)を交互に繰り返す「インターバルトレーニング(HIIT)」も、ミトコンドリアの適応を促す方法として研究されています。運動量・時間が少なくても、持久的トレーニングと類似した骨格筋ミトコンドリアの適応が得られることが報告されており、時間のない人の選択肢として注目されています12。ただし強度が高い分、体への負担も大きいため、運動習慣のない方はまず歩行などの中強度運動から始めるのが現実的です。

空腹の時間とマイトファジー

マイトファジーとは ― 傷んだミトコンドリアを選んで分解する仕組み

マイトファジーとは、細胞の自己分解システムである「オートファジー」のうち、傷んだミトコンドリアだけを選択的に分解する仕組みを指します。膜電位が低下した(=機能が落ちた)ミトコンドリアの表面にPINK1というタンパク質が蓄積し、そこにParkinというタンパク質が呼び寄せられて「分解してよい」という目印がつけられ、オートファジーの仕組みによって分解・リサイクルされます1314。これにより、活性酸素を過剰に出すような不良ミトコンドリアが取り除かれ、集団としての質が保たれます。オートファジー全般の仕組みは、オートファジーの解説記事で詳しく解説しています。

老化さん用語解説
膜電位
ミトコンドリアの内膜の内側と外側で生じる電気的な差。エネルギーをつくる力の指標で、この低下は機能が落ちたサインとされる。

たとえでいうと、マイトファジーは工場の設備点検です。性能が落ちた機械(傷んだミトコンドリア)に点検シール(PINK1・Parkin)が貼られ、回収・リサイクルされることで、工場全体の生産効率が保たれます。

空腹の時間が関わるとされる理由

オートファジーは、栄養が十分にあるときには抑えられ、栄養が不足したときに活発になる性質を持っています15。食べ物が入ってこない時間帯に、細胞が自らの構成部品を分解して資源を再利用しつつ、傷んだ部品を片づける、という理にかなった仕組みです。断続的な絶食(intermittent fasting)が代謝や細胞の品質管理に及ぼす影響については、動物実験とヒトを対象とした研究の双方で研究が進められています16。ただし、ヒトで「何時間の空腹が最適か」を確立したエビデンスはまだ限られています。現時点では、食べ過ぎを避けて腹八分目を心がける、就寝直前の食事や間食を控えて食間を空ける、といった現実的な範囲での実践が考えられます。

注意点 ― 極端な絶食を勧めるものではありません

本記事は極端な絶食や断食を推奨するものではありません。成長期の方、妊娠中・授乳中の方、痩せ型の方、糖尿病などの持病がある方や服薬中の方は、食事時間の変更を試みる前に必ず医師にご相談ください。

睡眠 ― 修復とメンテナンスの時間

睡眠中は、日中に活動した細胞の修復やメンテナンスが行われる時間帯と考えられています。近年は、睡眠不足と酸化ストレスの関係を示す動物実験も報告されています。2020年には、ショウジョウバエとマウスを対象に、睡眠を強く奪うと腸に活性酸素が蓄積し、それが死につながることを示した研究が発表されました。この研究では、抗酸化物質を与えて活性酸素の蓄積を防ぐと、ほとんど眠らない状態でも寿命が保たれました17。ただしこれは睡眠を極端に奪う実験条件であり、日常的な寝不足と同じではありません。ヒトでの機序解明はこれからの課題ですが、慢性的な睡眠不足が代謝や細胞のメンテナンスに好ましくない影響を与えうることは、多くの研究者が指摘するところです。運動や食事の工夫を活かすためにも、睡眠時間を削らないこと、就寝・起床のリズムを一定に保つことが土台になります。

栄養素との関わり

ミトコンドリアの働きには多くの栄養素が関わっています。大前提として、これらはバランスの良い食事から摂取することが基本であり、特定の成分を摂れば「ミトコンドリアが増える」と断定できる研究段階にはないことに注意が必要です。

コエンザイムQ10

コエンザイムQ10(CoQ10)は、ミトコンドリアの電子伝達系で電子の受け渡しを担う、エネルギー産生に必須の分子です。体内で合成されますが、その量は加齢とともに減少する傾向が報告されており、還元型(ユビキノール)を含めた補給の研究が行われています18。青魚や肉類などに含まれます。補給の効果については、より大規模で長期の臨床試験が必要とされている段階です18

鉄・亜鉛・マグネシウム

鉄は、電子伝達系を構成するタンパク質(ヘムや鉄硫黄クラスター)の材料として、ミトコンドリアでのエネルギー産生に直接関わるミネラルです。マグネシウムは、ATPが体内で機能する際にマグネシウムと結合した形(Mg-ATP)で働くため、エネルギー代謝全般に不可欠です。亜鉛も多数の酵素の補因子として代謝を支えています。いずれも不足しないよう、食事から過不足なく摂ることが基本です。

ビタミンB群

ビタミンB群は、エネルギー代謝の「補酵素」の材料として働きます。たとえばビタミンB1は糖質の代謝に、ビタミンB2は電子伝達系で働く補酵素FADの材料として、ナイアシン(ビタミンB3)は次に述べるNAD⁺の材料として、それぞれミトコンドリアでのエネルギー産生を支えています。

老化さん用語解説
補酵素
酵素が働くときに必要となる補助役の分子。ビタミンB群やナイアシンなどからつくられるものが多い。

NAD⁺という補酵素

NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、栄養素から取り出した電子(水素)をミトコンドリアの電子伝達系まで運ぶ「運び屋」として、エネルギー産生に不可欠な補酵素です19。NAD⁺は、後述するサーチュインなどの酵素が働く際の材料にもなるため、老化研究の分野で大きな注目を集めています。ヒトを対象とした研究では、皮膚や骨格筋などの組織でNAD⁺量が加齢に伴い低下することが繰り返し報告されている一方、血液(全血)中のNAD⁺濃度は年齢や生活習慣の介入では変わらなかったとする報告もあります。これは「加齢で減る」という知見が覆ったのではなく、血液を測っても組織の中で起きている変化は見えにくい、と理解するのが現時点では妥当です。NMNなどのNAD⁺前駆体と呼ばれる成分の研究も進められています。NAD⁺の働きや加齢で減る仕組み、前駆体の違いについては、NAD⁺の解説記事で詳しく解説しています。

サーチュインとミトコンドリアの関係

サーチュイン(Sirtuin)は、NAD⁺を使って働く酵素のファミリーで、「長寿遺伝子」という通称でも知られています。ミトコンドリアとの関係で重要なのは、サーチュインの一種であるSIRT1が、ミトコンドリア新生の司令塔PGC-1αを活性化(脱アセチル化)することです20。細胞のエネルギー状態が変化してNAD⁺が増えるとSIRT1が働きやすくなり、PGC-1αを介してミトコンドリアの働きが調整される、というつながりです。運動や空腹といった「エネルギーが使われる状況」がミトコンドリアを増やす方向に働く背景には、NAD⁺とサーチュインを介したこうした細胞内のネットワークがあると考えられています。

まとめ

  • ミトコンドリアは細胞のエネルギー(ATP)をつくる小器官であり、同時に活性酸素の主な発生源でもある
  • 「増やす」はミトコンドリア新生(PGC-1α)、「質を保つ」はマイトファジーという別々の仕組みであり、両方が回っていることが大切
  • 加齢とともにミトコンドリアの数と機能が低下することがヒトの研究で報告されており、老化の12要因のひとつにも位置づけられている
  • アプローチの柱は、有酸素運動(週150〜300分の中強度が目安)、適度な空腹時間、良質な睡眠、そして食事からの栄養素
  • 栄養素や絶食の効果には研究段階の部分が多く、断定はできない。持病のある方は運動・食事の変更前に医師への相談を

[ 引用・参考文献 ]

  1. Spinelli JB, Haigis MC. The multifaceted contributions of mitochondria to cellular metabolism. Nature Cell Biology. 2018. ↩︎
  2. Murphy MP. How mitochondria produce reactive oxygen species. Biochemical Journal. 2009. ↩︎
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  5. Pickles S, Vigié P, Youle RJ. Mitophagy and quality control mechanisms in mitochondrial maintenance. Current Biology. 2018. ↩︎
  6. Short KR, et al. Decline in skeletal muscle mitochondrial function with aging in humans. PNAS. 2005. ↩︎
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  12. Gibala MJ, et al. Physiological adaptations to low-volume, high-intensity interval training in health and disease. The Journal of Physiology. 2012. ↩︎
  13. Narendra D, et al. Parkin is recruited selectively to impaired mitochondria and promotes their autophagy. Journal of Cell Biology. 2008. ↩︎
  14. Narendra DP, Jin SM, Tanaka A, et al. PINK1 is selectively stabilized on impaired mitochondria to activate Parkin. PLoS Biology. 2010;8(1):e1000298. ↩︎
  15. Mizushima N, Komatsu M. Autophagy: renovation of cells and tissues. Cell. 2011. ↩︎
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  19. Cantó C, Menzies KJ, Auwerx J. NAD⁺ metabolism and the control of energy homeostasis: a balancing act between mitochondria and the nucleus. Cell Metabolism. 2015. ↩︎
  20. Rodgers JT, et al. Nutrient control of glucose homeostasis through a complex of PGC-1α and SIRT1. Nature. 2005. ↩︎

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