オートファジーとは​?

投稿日:2025.11.26  |  更新日:2025.12.02

12の老化要因「AGING HALLMARKS」にも関与する生命の根源的な仕組み

NOMON & Co.は、世界中の研究の指標となっている12の老化要因「AGING HALLMARKS」を研究の指針としており、その第5の要因である「オートファジーの機能低下」に着目しています。本記事では、その「オートファジー」について、基本的な仕組みから、なぜ私たちの健康にとって重要なのか、そして加齢とともに低下する機能を日常生活の中でどのように活性化できるのかについて、分かりやすく解説します。

この記事でわかること

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オートファジーとは?

オートファジーとは、細胞内にあるものを回収・分解し、リサイクルするシステムです。
では、細胞の中では具体的にどのようなプロセスが行われているのでしょうか。私たちの細胞を一つの「リサイクル工場」に例えて、その仕組みを見てみましょう。


オートファジーの仕組み

オートファジーは、以下の3つのステップで行われます。この一連の流れがオートファジーです。

ステップ① 不用品の回収(隔離膜の形成)

工場(細胞)の中で古くなったり、機能不全を起こしたりした機械(タンパク質など)が見つかると、細胞内の特定の場所から「隔離膜(かくりまく)」と呼ばれるシート状の膜が現れます。この膜は、リサイクル対象となる不用品を包み込むように広がり、確実に囲い込んでいきます。

ステップ② リサイクル袋への密封(オートファゴソームの完成)

隔離膜が不用品を完全に包み込むと、その口が閉じて「オートファゴソーム」という球状のカプセルが完成します。これにより、不用品が細胞内に散らばって悪影響を与えることなく、安全に運搬できる状態になります。

ステップ③ 分解と再生(リソソームとの融合)

このカプセルは、工場内の分解センターである「リソソーム」へと運ばれます。リソソームには消化酵素が含まれており、オートファゴソームと融合することで中身はアミノ酸などの最小単位の部品にまで分解され、再利用されます。


オートファジーはなぜ私たちにとって大切なのか?

オートファジーの機能は多岐にわたりますが、代表的なものとして、以下の2つの重要な役割があると考えられています。

1. 細胞の新陳代謝

私たちの体は、外見上は昨日と同じように見えますが、実はその細胞の中身は毎日少しずつ作り替えられています。この細胞内部の新陳代謝を担っているのがオートファジーです。

例えば、1台の車を想像してみてください。通常、車は購入から10年も経てばあちこちが劣化し、「中古車」になってしまいます。しかし、もし毎日「今日はハンドル、明日はブレーキ」といった具合に、古い部品を少しずつ新品に交換し続けることができたならどうでしょうか? 数ヶ月もすれば、見た目は同じ車のままでも、その中身はピカピカの「新車」へと生まれ変わっているはずです。
私たちの細胞が行っているのは、まさにこれと同じことです。オートファジーは、細胞内をランダムに分解し、それを材料として新しい成分を作り出すサイクルを回し続けています。外見は変わらなくても、中身は常に新しい状態に更新され続けているのです。
もし、この「中身の入れ替え」が止まってしまうとどうなるでしょうか。オートファジーの機能を止めたマウスの実験では、生活習慣病や心不全、アルツハイマー型認知症など、さまざまな病気が発症することが報告されており、健康維持に不可欠な仕組みであることが明らかになっています※1

2. 細胞内の有害物の除去

オートファジーには、細胞の中身をランダムにリサイクルする働きだけでなく、細胞内の有害な物質を特定し、狙い撃ちして除去する働きもあることが、大阪大学大学院の研究チームによって発見されました※2

具体的にどのようなものを狙い撃ちするのでしょうか。まず一つ目は、外部から侵入してくる「病原体(細菌など)」です。もし細菌などが細胞の中に侵入してしまっても、オートファジーはそれを見つけ出し、分解してしまいます。二つ目は、細胞の内部で発生する「有害なゴミ」です。例えば、細胞内でエネルギーを作る「ミトコンドリア」は、古くなると有害な活性酸素を出すようになります。オートファジーはこうした不良品をいち早く見つけて処理します。また、アルツハイマー型認知症の原因と言われる脳内の「異常なタンパク質」も、オートファジーが掃除してくれる可能性があることが分かってきています。

加齢とともに低下するオートファジーの機能

ここまで見てきたように、オートファジーは「細胞の中身の入れ替え」と「有害物質の除去」という重要な役割を担っています。しかし、このオートファジーの働きは、加齢とともに少しずつ低下していくことが、近年の研究から明らかになってきました。その要因の一つとして、加齢とともに体内で増える「ルビコン」というタンパク質の存在が挙げられます※3。このルビコンはオートファジーの働きにブレーキをかける性質を持ち、その量が増えるほど、オートファジーの働きが低下してしまうと考えられています。異常なタンパク質が細胞内に蓄積したり、機能不全を起こしたミトコンドリアが有害な活性酸素を発生させやすくなるなど、細胞の機能低下を招く一因となります。


オートファジーを活性化させるには?

では、加齢とともに低下するオートファジーの働きを高めることはできるのでしょうか。研究により、日々の生活習慣によってオートファジーを活性化できる可能性が示されています。ここでは、3つのアプローチを紹介します。

1. カロリー制限と間欠的ファスティング

オートファジーを活性化させる最も強力なスイッチの一つが「適度な空腹」です。食事から栄養が入ってこないと、細胞は生き延びるために、細胞内にある古いタンパク質などを分解して新しいエネルギー源や材料として再利用しようとします。これがオートファジーの活性化につながります※4
具体的には、摂取カロリーを普段の70〜80%に抑える「カロリー制限」や、1日のうち食事を摂る時間を8時間に限定し、残りの16時間は何も食べない「間欠的ファスティング(16時間断食)」などが、オートファジーを誘導する方法として知られています。
ただし、極端な食事制限は健康を害する可能性があるため、専門家への相談や、ご自身の体調をよく観察しながら行うことが重要です。

2. 適度な運動

ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動も、オートファジーを活性化させることが研究で示されています※5。運動によって細胞がエネルギーを必要とすると、オートファジーが働き、細胞内のエネルギー産生工場であるミトコンドリアの品質管理などに貢献すると考えられています。激しい運動である必要はなく、継続的に体を動かす習慣が、細胞レベルでの健康維持につながる可能性があります。

3. 特定の栄養成分の摂取

近年の研究により、特定の食品成分がオートファジーを活性化させる可能性が次々と明らかになっています。私たちの研究開発においても、このアプローチに着目しています。

阿波晩茶エキス末

私たちの栄養素コンテンツでご紹介している徳島県の伝統的な発酵茶から抽出したエキスです。基礎研究において、細胞のオートファジー活性を高める可能性が示されています※6
阿波晩茶エキス末について詳しくはこちら

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)

NAD+という、あらゆる細胞でエネルギー産生に不可欠な補酵素の前駆体です。研究により、NMNの摂取がサーチュイン遺伝子を活性化させ、それがオートファジーを促進する可能性が示唆されています。NMNについて詳しくはこちら

これらの成分は、日常生活の中で無理なくオートファジーの働きをサポートする、新しい選択肢となる可能性を秘めています。


参考文献・出典

※1 オートファジー欠損と疾患発症の関連について:以下の研究により、オートファジー機能を欠損させたマウスにおいて、神経変性疾患、肝機能障害、心不全などの症状が自然発症することが証明されています。
・神経変性疾患(アルツハイマー病様症状):Komatsu M, et al. “Loss of autophagy in the central nervous system causes neurodegeneration in mice.” Nature. Jun 15;441(7095):880-4.
Hara T, et al. “Suppression of basal autophagy in neural cells causes neurodegenerative disease in mice.” Nature. 2006.
・生活習慣病・肝機能障害:Komatsu M, et al. “Impairment of starvation-induced and constitutive autophagy in Atg7-deficient mice.” J Cell Biol. 2005.
・糖尿病(インスリン分泌不全):Ebato C, et al. “Autophagy is important in islet homeostasis and compensatory increase of beta cell mass in response to high-fat diet.” Cell Metab. 2008.
・心不全:Nakai A, et al. “The role of autophagy in cardiomyocytes in the basal state and in response to hemodynamic stress.” Nat Med. 2007.

※2 Nakagawa I, et al. “Autophagy defends cells against invading group A Streptococcus.” Science. 2004 Nov 5;306(5698):1037-1040.

※3 Nakamura S, et al. “Suppression of autophagic activity by Rubicon is a signature of aging.” Nat Commun. 2019 Feb 19;10(1):847.

※4 Madeo F, Carmona-Gutierrez D, Hofer SJ, Kroemer G. “Caloric Restriction Mimetics against Age-Associated Disease: Targets, Mechanisms, and Therapeutic Potential.” Cell Metab. 2019 Mar 5;29(3):592-610.

※5 He C, et al. “Exercise-induced BCL2-regulated autophagy is required for muscle glucose homeostasis.” Nature. 2012 Jan 18;481(7382):511-5.

※6 阿波晩茶エキス末の作用については、関連する学会発表データに基づきます。